親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。
オフィスで、お家で、サードプレイスで……さまざまな仕事スタイルが増えた昨今。しかし、どこで働いていても仕事の悩みはつきまといます。連載企画「専門家に聞く!WORK GOOD」では、そんな悩めるワーカーのモヤモヤを解消し、スッキリとした気持ちで仕事に臨むためのヒントを、さまざまな分野の専門家が解説します。
長時間座りっぱなしで作業するデスクワーカーにとって、肩こりや疲労感、寝つきの悪さはつきもの。外出の少ない在宅ワーカーであればなおさら、体のこわばりや血流の滞りを感じやすくなります。
そんな毎日の不調を、自宅で手軽にケアできる方法のひとつが入浴です。シャワーだけで済ませず湯船に浸かることが大切だと言われていますが、仕事疲れにはどんな入浴法が効くのでしょうか。
第20回は、入浴の医学研究者として数多くの研究を行う早坂信哉さんに、入浴の健康効果から基本の入浴法、在宅ワーカーにおすすめの入浴による疲労回復術までを詳しくお聞きしました。
肩こりが改善し、うつ病のリスクが低下。入浴のうれしい健康効果
入浴で得られる効果のうちもっとも重要なものは、体を温める温熱作用です。体が温まって血管が拡張し、血流がよくなると、全身の細胞一つひとつに酸素や栄養が行き届き、老廃物や疲労物質が排出されやすくなります。
また、体が温まると筋肉の緊張がゆるみ、関節を包む靭帯がやわらかくなり、神経の過敏性も一時的にとれます。そのため、腰痛や肩こり、関節痛が緩和されたり、同じ姿勢を取り続けることで硬くなった体がやわらかくなったりします。
寝つきや睡眠の質の改善にもつながります。ぬるめのお湯にゆっくり浸かると副交感神経が優位になってリラックスし、体が睡眠モードになります。さらに、入浴によって深部体温(体の奥の体温)が上がってその後急速に下がると、眠気を催しやすくなります。睡眠に悩みがある人は、できるだけ湯船に浸かってほしいですね。
入浴にはこうした短期的なメリットだけでなく、長期的なメリットもあることが明らかになりつつあります。私たちの研究グループがおこなった複数の研究で、毎日入浴することでうつ病の発症リスクが24%、認知症の発症リスクが26%下がることがわかりました。
こうした効果は、おそらく睡眠の質の向上、体の痛みが改善されることによる動きやすさ、血流改善などと関係しているのではと思います。運動習慣や食生活の改善のように、短期的なメリットの積み重ねが長期的なメリットにつながっているんです。
今日の疲れにも、そして自分の未来にもよい効果が期待できる入浴。今日から始めたい入浴習慣のポイントを、次の章から解説します。
疲れがとれてぐっすり眠れる「基本の入浴法」
私が推奨している入浴法は「40℃で10分間の全身浴」です。忙しい在宅ワーカーでも、効率よく健康効果を得られます。
まず、温度について。ぬるめのお湯に浸かると副交感神経が優位になり、睡眠の質がよくなるとすでにお伝えしましたね。ただし、39℃以下だと体が十分温まるのに時間がかかるので、40℃がおすすめです。
10分間としているのは、これより短いと体が温まりにくく、長いとのぼせやすいからです。とはいえ、実際に体が温まるまでの時間には年齢差や個人差がありますし、浴室の温度などにも左右されます。判断基準は、「額に汗がじんわりにじむ」まで。「40℃で10分間」を目安にしつつ、自分の体調と相談しながら浸かりましょう。
全身浴がおすすめなのは、体全体がくまなく温まりやすいためです。関節などにかかる負荷を減らす浮力、むくみを解消する水圧など、温熱作用以外の効能も発揮されやすくなります。息苦しく感じる場合は半身浴でもかまいませんが、体温が十分上がるのに時間がかかるので、少し長めに浸かるようにしてください。
入浴するタイミングも大切です。湯船に浸かると血液が皮膚の表面に集まり、胃腸に血液がいきにくくなって消化が悪くなるので、食事と入浴の間隔は30分から1時間ほど空けましょう。
また、一度上がった体温が下がり、眠気をもよおすまでには1時間半ほどかかります。睡眠の質を高めたいなら、就寝時間の約1時間半前に入浴するのがベストです。体温が下がるときに足先の冷えが気になる人は、靴下を履いてもかまいません。ただし、布団に入るときには脱ぎ、足先から放熱できるようにしてください。

入浴の前後は、必ず水分摂取をしましょう。湯船に浸かると500mlから800mlの汗が出ると言われています。入浴前、入浴後にそれぞれコップ1杯の水分を摂り、脱水を防いでください。
寒い季節に怖いのは、いわゆる「ヒートショック(血圧の乱高下による心臓や血管への負荷)」です。気温差で起こりやすくなるため、予防のために脱衣所や浴室を温めておきましょう。浴室暖房がない場合は、湯船の蓋を開けてお湯を張るか、シャワーを洗い場や湯船に1~2分かけ流しにすると、湯気が出て浴室が温まりますよ。
忙しい在宅ワーカーこそ、入浴をリラックスのスイッチに
私は産業医として在宅ワーカーと話す機会があるのですが、在宅ワークでは仕事とプライベートの切り替えが難しくなる傾向があります。寝る直前まで仕事していて、頭が冴えて寝つけないという悩みを抱える人は多いですね。
際限なく仕事をしてしまう人は、入浴をオンオフの切り替えスイッチにしてほしいです。できれば「入浴後は仕事をしない」と決め、時間の使い方にメリハリをつけましょう。
入浴中もあまり仕事のことは考えず、なるべくゆったり過ごせるといいですね。浴室にスマートフォンを持ち込む人もいますが、仕事のメッセージなどに対応していると、せっかくのリラックス効果が薄れてしまいます。通知がどうしても気になるなら、持ち込まないほうがいいかもしれませんね。
とはいえ、入浴中に何もせず10分間ぼーっとするのは実は難しいもの。仕事の悩みなどが頭に浮かび、思ったほどリラックスできません。そこで私は、アナログの防水ラジオを浴室に持ち込んでいます。興味の有無にかかわらずさまざまなトピックが流れてくるので、頭を働かせすぎずに流し聞きできます。適度に意識が分散し、ゆったりした気分になれますよ。

仕事が忙しくて入浴から就寝までに十分な時間をとれない日もあると思います。そんな日は無理にお風呂を優先せず、シャワーを浴びてさっさと寝てOK。体をしっかり温めないと疲れはとれませんが、あえて早く寝ることを優先する日もあっていいと思います。その代わり、休みの日などにゆっくり湯船に浸かって、溜まった疲れを癒してくださいね。
「お風呂に入るのが遅くなってしまったけれど、今日の疲れは今日のうちに解消したい」というときもあるでしょう。そんな日におすすめしたいのは、炭酸ガスが出る入浴剤です。お湯に溶け込んだ炭酸ガスが皮膚から吸収され、血管を拡張して血流を促します。
炭酸ガスは温熱作用とは異なる仕組みで血流を改善するので、ぬるめのお湯に発泡タイプの入浴剤を入れれば、体温を上げすぎずに疲労をとることができます。38℃のお湯に発泡タイプの入浴剤を入れ、20分ほど浸かってじっくりと温まりましょう。
肩や首、背中などがこったときは、首までしっかりお湯に浸かって5分ほど温め、筋肉や関節が柔らかくなったところで軽くほぐす運動をしましょう。肩の上げ下げ、首を回す、手を肩の上に置いて肘を回すなどの動きをするだけでずいぶん楽になりますよ。
さらに贅沢な気分に! 休日に試したい特別な入浴法
休日など「今日はゆっくり入りたい」という日は、飲み物を用意して飲み物を用意して入浴し、いったん湯船から出て飲み物を飲みながら涼み、また入浴するというセットを繰り返して、のんびり入浴を楽しむのもいいでしょう。湯船に浸かる時間は、トータルで15分から20分程度を目安にしてください。それ以上になると、かえって疲労感が強くなります。
温冷交互浴もおすすめです。40℃程度のお湯に3分浸かったあと、30℃ほどの水を手足に30秒かけ、これを3セット行います。全身に冷水をかける必要はなく、手先・足先だけで十分です。仕上げは温かいお湯で終えると、血流がよくなり、リフレッシュ効果が高まります。
アロマオイルを使って浴室をいい香りにするのも、リラックス効果を高めてくれます。洗面器にお湯を張り、アロマオイルを2~3滴垂らして洗い場に置くだけで、浴室全体に香りが広がります。定番はフローラル系や柑橘系の香りですが、まるで高級旅館にいるような雰囲気を味わえる、森林系や松の精油もいいですね。ただし、アロマオイルは肌に触れると刺激になることがあるため、浴槽には入れないようにしてください。
また、私が個人的におすすめしたいのが、休日の日中に入浴する「昼風呂」です。普段は夜のルーティンであるお風呂に明るいうちから入ることで、ちょっとした非日常感を味わえます。夜にお風呂に入る場合は就寝のタイミングを考えて体を冷ましていく必要がありますが、日中であれば体を保温して過ごして大丈夫。入浴後は部屋着に着替え、毛布にくるまりながら温かさを保ってみてください。ぬくぬくと贅沢な気分を味わえる、特別な時間になりますよ。

お風呂は在宅ワーカーの健康づくりにぴったりの場
在宅ワークをしていると体を動かす機会が減り、血流が悪くなりがちです。仕事とプライベートの境目も曖昧で、常に仕事モードになってしまっている人も少なくありません。だからこそ、お風呂を「汚れを落とすために仕方なく入るもの」ではなく、もっとポジティブに捉えてほしいのです。
お風呂はいわば「家庭における健康づくりの場」です。疲れがとれ、体の痛みを軽減でき、長期的な健康維持にもつながります。オンオフの切り替えのきっかけにもなり、リラックスモードのスイッチを入れてくれます。健康面の悩みが生じやすい在宅ワーカーの皆さんにこそ、生活のルーチンのひとつという枠を超えて、セルフケアとしてのバスタイムを大切にしてほしいですね。
早坂信哉
温泉療法専門医/東京都市大学人間科学部教授
1968年生まれ、宮城県出身。高齢者医療の経験から、入浴にフォーカスした研究を開始。25年以上にわたり、7万人にのぼる入浴を調査している。入浴や温泉の医学研究を続けながら、メディア出演や公演など多方面で活動。著書に「最高の入浴法〜お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案」(大和書房)、「入浴 それは、世界一簡単な健康習慣」(アスコム)など。
取材・執筆:小晴 アイキャッチ・図版:サンノ 編集:モリヤワオン(ノオト)
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